発達障害・注意欠陥多動障害
発達障害とは、生まれつき脳の一部に障害をもつことで、様々な特性がみられるものを言います。最近では、乳幼児期にご家族が特性に気づいたり、定期検診で気づかれることが多いでしょう。
特性の現れ方が軽度の場合、子どものうちに気づかれず、青年期や成人になってから二次的な精神障害を発症し、初めて発達障害だと分かることもあります。
特性の現れ方や、どの時期から特性が目立つようになるかは、その人のおかれている環境にも大きく左右されます。
次では、発達障害について、タイプ別にもう少し詳しく説明していきます。
いずれにも共通して言えることは、この障害特性は先天性のものですので、決して性格に問題がある、育て方が悪いといったことで起こるものではないということを、しっかりと理解していただく必要があります。
(1)自閉症スペクトラム障害 (広汎性発達障害)
多くの場合、以下の3つの特徴の全て、もしくは一部がみられます。
- 社会性の障害
人と視線を合わせようとしない、人より物に関心を示すなどの傾向が、早い段階でみられます。集団行動が苦手なため、幼児期・学童期に対人関係において支障が生じやすくなります。- コミュニケーションの障害
人の表情から感情を読み取ることが苦手であったり、言葉を字義的にとらえてしまい、しばしば会話が成立しないことがあります。- 想像力の障害
特定の物を集める、同じ行動を繰り返すなどのこだわりがみられます。変化に弱く、突然の出来事にパニックをおこしたりします。他にも、特定の光や音、臭いなどに敏感に反応したり、自身の肌に触れられることをひどく不快に感じることもあります。
(2)学習障害 (LD)
明らかな知的発達の遅れはみられないにも関わらず、文字が読めない、計算ができない、書けないなど、限られた分野だけ全くできないといった特徴がみられます。小学校低~中学年に成績不振で気づかれることがあります。
注意欠陥多動障害 (ADHD)
忘れ物やなくし物が多い、ケアレスミスが多い、一つの課題に取り組み続けることができないなどの不注意、じっと座っていられない、待てない、喋り続ける、人の話に割って入ることが多いなどの多動・衝動性が、12歳までにみられます。家庭や学校、場所や環境に関わらず、不注意や多動・衝動性が生じることで、生活などに大きな支障が見られる場合に診断されます。成長に伴い、人から気づかれやすい多動性は軽減することも多いですが、不注意や言動の衝動性は成人後も続き、仕事や対人関係で問題を抱え、うつ病や適応障害のような精神疾患を併発することがあります。
診断、治療
発達障害の診断をする際、乳幼児期~学童期の情報がとても役立ちます。そして発達検査や性格検査といった心理検査を受けてもらい、発達年齢が実年齢と比べてどの程度であるか、能力に大きなばらつきがないかなどを評価します。診断では、自閉症スペクトラム障害と注意欠陥多動障害(ADHD)が合併していることがあります。また、一旦診断がついても、その人(子)の発達に伴う特性のみられ方によって、診断が変わることもあります。
発達障害の治療では、主に就学前のお子さんに対して『療育』が行われます。
これは、治療と教育を合わせたもので、様々なトレーニングを受けることができます。思春期の方や大人の発達障害の方には、それぞれの特性に応じたカウンセリングが有効なこともあります。
障害特性ゆえに日常生活での生きづらさがあり、二次的にうつ病などの精神疾患が認められた場合、症状に対する薬物療法を行うことがあります。注意欠陥多動障害(ADHD)では、必要に応じてADHD治療薬が用いられることがあります。
薬物療法を始められる際は、医師と相談の上慎重に行ってください。
最後に
発達障害では、早期に診断を受け、早い段階でトレーニングを受けることが大切になります。そして、ご家族をはじめとする周囲の大人たちが、その人(子)の特性を理解して受け入れてあげることが最も重要です。思春期や大人になって、初めて発達障害であると分かったとしても、決して遅くはありません。
診断がつくことにより、ご家族や学校の先生、職場の人に、ご自分が何が苦手で困っているのかを具体的に伝え、環境調整に協力してもらうことが出来れば、これまでよりずっと生きやすくなると思います。「自分は他の人と何か違う」とお悩みの方は、ぜひ一度医療機関にご相談ください。