うつ病(躁うつ病)
うつ病という病気は、その原因はいまだはっきりしていないところも多いのですが、次のような要因がきっかけで、うつの症状が生じるのではないかと考えられています。
(1)内因性によるもの
一部の脳神経の化学伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)がうまく働かなくなることでおきるのではないかと考えられています。
(2)身体因性によるもの
脳の年齢に伴う変化や脳・内臓疾患による変化、ホルモンバランスの変化が関係していることが考えられています。
また、ステロイドやインターフェロンといった薬剤によるホルモンバランスの変化との関係も示唆されています。
(3)心因性によるもの
その人のもつ性格や、その人をとりまく環境が関係していることも考えられています。ストレスになり得る環境変化は、人によって様々です。
例えば、大切な人との死別や、退職・解雇、離婚といった多くの人が悲しいと感じる出来事だけでなく、昇進や結婚といった、一見嬉しい出来事もストレスとなる可能性があります。
症状
うつ病を疑う時、多くの方が感じる症状として、次のようなものがあります。
- 気分が落ち込む
- やる気がでない、今まで好きだったことにも興味がもてない
- 眠れない、もしくは1日中眠い
- 体が重く、疲れやすい
- 考えがまとまらない
- 不安で仕方がない、イライラしてしまう
- 消えてしまいたいと感じる、死にたいと考えてしまう
また、上記のように患者さん自身が感じていなくても、周囲が異変に気づくこともあります。
表情が暗くなった、声をかけても反応が乏しくなった、イライラ、ソワソワしている、ミスや物忘れが多くなった、お酒の量が増えたなどの変化がみられることがあります。
一方、自分では気分がすこぶる爽快で、眠らなくても元気だし、何事も順風満帆であると感じる状態を躁状態といいます。
周囲からみると、いつまでも話し続ける、一方的である、怒りっぽい、行動や言動がまとまらないと感じられるため、人間関係に支障をきたしやすい状態でもあります。
このような躁状態と、先に述べたうつの症状がみられる状態が周期的に繰り返しみられる場合は、躁うつ病を疑います。
治療法
うつ病や躁うつ病の治療には、まず第一に、少なくとも数週間~1か月程の安静が必要になります。一度バランスを崩してしまった脳や体をしっかりと休ませてあげることが大切です。
症状がでるきっかけになった環境要因があるのであれば、そちらの調整もしていきます。例えば、仕事や家事・育児が積み重なったことに疲れてしまったのなら、仕事量や勤務時間を減らす、家族と役割を分担することで、脳や体の負担を軽減できるかもしれません。
身体的な病気が関係している可能性があるならば、そちらの治療も行なっていく必要があります。
そして第2に、お薬による治療が必要かを検討していきます。うつ症状に対して抗うつ薬が用いられますが、これは先に述べた内因性の要因にのみ、効果を発揮するものです。また、効果がみられるまでに数週間かかるのも、このお薬の特徴です。効果の出方は個人差が大きいため、副作用が出ていないかも含め、その都度医師と相談されるのがよいでしょう。
躁うつ病の薬物療法を行う場合は、うつ病のそれとは異なり、抗躁薬や気分安定薬がよく用いられます。
他にも、性格要因が大きく関係している場合は、認知行動療法などの心理療法が有効なこともあります。ご自分の性格傾向を知り、頑張りすぎないように意識してみるのもいいでしょう。
最後に
うつ病、躁うつ病は、一つの要因で発症することは少なく、複数の要因が重なることで症状が出てしまうものです。そして、誰でも発症する可能性がある病気でもあります。また、一旦症状が改善しても再発することが多いため、治療には何年もかかる場合があります。
病気を知り、ご自分を知り、うまく病気と付き合いながら過ごされることが症状の重症化や再発の予防につながりますので、ご自分が少しでもうつ病や躁うつ病かなと感じられましたら、早めの受診、医師への相談をお勧めします。